WINE STORY 挑戦と情熱の物語 ワイナリー開業15年の軌跡WINE STORY 挑戦と情熱の物語 ワイナリー開業15年の軌跡

ヴィンヤード、ワイナリー、
人物の歴史やストーリーなど。
世界に誇るワイナリーへと
成長した15年の歩み

2025年、ケンゾー エステイトはワイナリー開業から15周年を迎えました。辻本憲三&夏子オーナー夫妻の決意より幕を開けた挑戦は、理想の土壌を追求した畑の再構築を契機に、初収穫、醸造施設の設立、各種ワインの誕生へと結実。その歩みは、世界に誇るワイナリーとしての地位を確立するに至ったのです。

この開業15年という節目の年に、現在に至るまでにワイナリーが歩んできた軌跡を振り返ります。

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決意から開業まで20年以上もの歳月で築き上げた、ワイナリーの礎

ワイナリー開業15周年とはいうものの、辻本憲三&夏子オーナー夫妻が、ワイナリー事業を手掛ける決意をしたのは、1990年のこと。2001年には、14万本の葡萄樹を栽培するまでに至ります。しかし、現在の栽培家デイビッド・アブリューの指摘を受け、すべての葡萄樹を引き抜き、畑を掘り返し、地中に埋まる石塊を取り除いて、葡萄樹が健全に根を張れるよう、土壌を作り直したのです。

2005年に初収穫を迎え、2006年までには、7期のフェーズに亘ってつくられてきた(現在の畑の8割を占めます)がすべて完成。2007年には、先行して生産していた「紫鈴 rindo」「紫 murasaki」「藍 ai」の3種の赤ワインに加え、白ワイン用の品種ソーヴィニヨン・ブランの初収穫も果たし、「あさつゆ asatsuyu」の生産が始まりました。2008年の暮れには、ケンゾー エステイトのワインが日本で先行披露され、大きな注目を浴びることになるのです。

2009年には、敷地内に醸造施設を造って、それまで外注していたワインメーキングを自社で行うようになり、100%自社製造のエステイトボトルへと認可されました。さらに2010年、醸造施設に隣接して、テイスティング棟を完成させ、晴れて、ビジターをワイナリーへ迎え入れる体制を整え、米国でのデビューを果たしたのです。

開業時のワインメーキングは、ハイディ・バレットを筆頭に、マーク・ネインズ、ヘレン・ケプリンガーというチームが担当。その後、ヘレンは自身のワイナリーを開業するため、チームから離れ、2017年には、ハイディからマークへとバトンが渡されます。

そして2025年、今やナパを代表するワインメーカーへと成長したヘレンが、再びケンゾー エステイトへ復帰。そのテロワールを知り尽くしている彼女が、ケンゾー エステイトのエレガンスにさらなる進化をもたらしてくれることでしょう。

尚、言うまでもなく、ケンゾー エステイトの栽培家は、初収穫から今日に至るまで、デイビッド・アブリューです。彼と辻本憲三との絆は、これからも絶えることなく続くことでしょう。

2010年大自然のベールに包まれたワイナリー、誕生の瞬間

ワイナリーの開業は、辻本憲三の考えで、妻である辻本夏子の誕生日7月1日に定められました。当日は、ワイナリーを開放してオープニングセレモニーが催され、大自然のベールに包まれて誰も目にすることのなかったケンゾー エステイトのワイナリーをひと目見んと、多くのゲストが集まりました。

エンターテインメント業界で、全米でもトップシェアを誇っていたカプコンの創業者が、自ら造り上げたワイナリーということもあって、開業時から大きな注目を集めることとなり、当時、300社以上ものメディアが、ケンゾー エステイト開業のニュースを取り上げたのです。

2011年冷夏が生み出した、「幻の紫」

この年はナパ・ヴァレーが冷夏に見舞われ、葡萄の生育にも影響が及ぶ年となりました。天候不良の場合、ケンゾー エステイトは、摘房の際に、通常より多くの房を落としていきます。しかし、この年の摘房は極端でした。葡萄樹1本にひと房だけの葡萄を残し、そこにすべての養分を集中させ、品質を落とさないようにしたのです。

その替わり、生産量はどの銘柄も激減します。特に「紫」の生産量は極めて少なく、2011年はわずか500本の生産しかできませんでした。しかし、その仕上がりは素晴らしく、このヴィンテージを熱望されるコアユーザーのお客様も少なくありません。文字通り、2011ヴィンテージは、「幻の紫」と言われるほどの名品となったのです。

2012年世界的に珍しい、カベルネ・フラン主体の赤ワイン「明日香」がデビュー

2009年の収穫時に、「紫鈴」などのブレンドに使用されるサブ品種のカベルネ・フランが大豊作となりました。当時のワインメーキングチームは、ワイナリーオーナーである辻本憲三に、余剰となるカベルネ・フランをバレルで他のワイナリーに販売することを提案しますが、辻本は、カベルネ・フラン主体のワインをつくることを発案します。こうして誕生したのが、「明日香 asuka」です。

「明日香」の誕生には裏話となるエピソードがあります。そもそも、カベルネ・フランを主体としたワインは、あまり商品化されておらず、ワインメーキングチームも、辻本のリクエストには応えていったものの、その仕上がりにはやや懐疑的でした。しかし、蓋を開けてみれば、その品質は素晴らしいものとなったのです。

カベルネ・フランの出来の良さに感銘したワインメーキングチームは、「明日香」をデビューさせるにあたり、ふたつのプロトタイプを用意しました。ひとつは、カベルネ・フランを主体にしながらも、現状に近いセパージュでブレンドされたもの。もうひとつは、カベルネ・フラン100%の提案でした。そもそも、ブレンダーとも言える醸造家が、単一品種100%のワインづくりを提案するということが、如何にこのカベルネ・フランの素晴らしさを物語っているか、ご理解いただけると思います。

結果的には、ブレンドタイプが選ばれ、2012年に晴れて「明日香」はデビューを飾り、大きな話題となりました。カベルネ・フラン100%のプロトタイプは幻の逸品となりましたが、「明日香」は、2015ヴィンテージで、一度だけカベルネ・フラン100%で商品化され、全米のベスト100ワインの1本にも選ばれています。

2013年世界最大級の寄付金を集める「オークション・ナパ・ヴァレー」に参加

ナパ・ヴァレーは、世界屈指のチャリティ先進地区です。子どもたちのための教育支援や医療設備の拡充を目的に、様々なチャリティ活動が行われていますが、その中でも世界最大級の寄付金を集めると言われているのが、毎年6月の第1週の週末に行われている「オークション・ナパ・ヴァレー」です。

このオークションは、ナパ・ヴァレーのワイナリーが提供した貴重なワインや特別なアイテムを、世界中から集まってくるゲストが、オークション形式で落札していくチャリティイベントで、その巨額な収益金のすべてがチャリティ基金となるのです。元々チャリティ意識の高かった辻本オーナー夫妻は、2013年から、このオークション・ナパ・ヴァレーに参加。2024年には、オークションに提供したロットが、ケンゾー エステイト史上の最高額で落札されるまでに至ったのです。

2014年遅摘み葡萄で開花させる、新たなソーヴィニヨン・ブランの魅力。「夢久」デビュー

2013年の収穫期から、「あさつゆ」に使用されるソーヴィニヨン・ブランの一部の収穫を、本来の時期からあえて1ヶ月ほど遅らせていきました。遅摘みした葡萄から、レイトハーベストのプロトタイプをつくり上げたのです。こうした取り組みによって、ケンゾー エステイトは、新たなソーヴィニヨン・ブランの魅力を開花させ、「夢久 muku」が、2014ヴィンテージで、本格的なデビューを飾ることとなったのです。

2015年赤ワインの未来を支える、新区画「ウッデン・ヴァレー」を開墾

これまで葡萄を育ててきた広大な畑(フェーズ1~7)に加えて、新たに「ウッデン・ヴァレー」という区画が開墾され、この年、初収穫を迎えました。

ウッデン・ヴァレーは、ケンゾー エステイトの中では比較的海抜の低い場所にあり、他のエリアに比べると生育が早く進みます。ここでは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロといった赤ワイン用の品種が栽培され、この畑の誕生によって、赤ワインの生産量が大きく拡大していったのです。

2016年スパークリングワイン「清」のプロトタイプが生まれる

今でこそ、3種のラインナップを有するケンゾー エステイトのスパークリングワインですが、実は、スパークリングワインの開発は2014年から始められていました。

2014年に収穫されたソーヴィニヨン・ブランを使って準備されたスパークリングワインは、シャンパーニュ製法に基づいて瓶内二次発酵を進め、熟成させていきました。そして、瓶の仮栓に溜まった澱を取り抜く澱引きという工程に伴い、澱を出した際に目減りした分をリキュールで補う「ドサージュ」という作業が生じます。そのドサージュが、2016年、初めて行われました。

ドサージュは、澱引きで目減りした分を補うという目的もありますが、糖分を加えることによって、酸味を抑え、ワインの味わいを微調整するという重要な意味を担っています。従って、ケンゾー エステイトでも補糖の比率にいくつかのバリエーションを用意してドサージュ・テイスティングを行ったのです。その結果、辻本オーナー夫妻が選択したのは、ノン・ドサージュ(補糖なし)でした。ケンゾー エステイトの葡萄は果実味が高く、キレのあるすっきりとした飲み口や爽快感のある味わいを保つ上では、ノン・ドサージュが最もバランスが良かったのです。

そして、2016年のドサージュ・テイスティングを経て、翌年、初のスパークリングワイン「清 sei」のプロトタイプが誕生するのです。

2017年天災を越えて生まれた、2017ヴィンテージ限定「深穏」の誕生秘話

2017年の収穫期に、北カリフォルニア広域で大規模な山火事が発生し、一部のワイナリーが消失する悲劇も生まれてしまいました。ナパ・ヴァレーもその影響から一帯が封鎖となり、数々のワイナリーが収穫作業の中断を余儀なくされたり、果実が山火事による煙害を被ってしまったりしたのです。

幸い、ケンゾー エステイトは、海抜が高く冷涼な丘陵地にあっただけに、山火事の被害こそ免れたものの、一帯の道路の封鎖によって、収穫期の畑に入ることができませんでした。

この封鎖は2週間近くにも及びました。その間、辻本オーナー夫妻は、果実が過熟してしまうのではないかと、大変な不安に駆られていたことでしょう。しかし、奇跡は起きたのです。この封鎖による収穫の遅延が、素晴らしい果実の実りを招き、結果的に最善の収穫タイミングを捉えることができたのです。それは人智を越えた、運命的な出来事だったと言えましょう。

道路封鎖が解除されて、すぐに畑へと出向いた辻本オーナー夫妻を迎えたのは、ふたりの不安を他所に、まるで何事もなかったかのように、深く、穏やかに連なる鮮やかな葡萄樹だったと、夫妻は当時を振り返ります。その穏やかな光景に安堵した夫妻は、この年の記憶を刻むために、2017ヴィンテージ限りの特別なワインをつくりました。それが「深穏 shinon」です。

67もの様々な区画から葡萄を収穫し、個性の異なる21種のキュベをつくり、さらにそれらをブレンド。フレンチオークの旧樽で25ヶ月もの長期熟成を重ね、この特別なワインを生み出しました。文字通り、深みと穏やかさを併せ持つこの「深穏」は、二度と成し得ない逸品となったのです。

2018年ケンゾー エステイト史上、最高評価を獲得した2018ヴィンテージ

2018年のナパ・ヴァレーは、過去20年間の中で最高の良年と謳われています。数々の受賞歴を誇るケンゾー エステイトですが、この年ほど高い評価を獲得したヴィンテージは未だありません。紅白のフラッグシップワイン「紫鈴」と「あさつゆ」や、ロゼの「結 yui」は、California Wine Advisorsの評価で、いずれも98点を獲得。「紫」と「藍」のふたつのトップキュベは同評価で、100点満点の最高評価を獲得しています。

しかし、ケンゾー エステイトの葡萄樹が成木へと成長し、真価を発揮していくのはこれからです。2018ヴィンテージを越える名品とのこれからの出会いに期待したいと思います。

2019年開業10周年。ナパ・ヴァレーのトップワイナリーへと成長

開業10年を迎えたこの年、ケンゾー エステイトの生産量は35万本を突破しました。そしてこの年、ケンゾー エステイトのワイナリーは、「Newsweek」にて、ナパ・ヴァレーの訪れるべきトップワイナリー10のひとつに選ばれたのです。

2020年「清」「蓮」「寿々」3種のスパークリングワインが誕生

清 sei」「蓮 ren」「寿々 suzu」と3種のスパークリングワインが出揃い、人気を博しました。また、生産量も拡大し、40万本に近い生産を果たすこととなりました。

2021年前年より5万本を増売。コロナ禍の逆行を越え、さらなる成長を実現

コロナ禍、ワイナリーへの訪問がままならない日々が続きましたが、日米ともに出荷量は拡大していきました。外食需要は減少したものの、ケンゾー エステイトのワインへの需要は上がり、前年から約5万本もの増売を果たしたのです。

2022年「あさつゆ」の未来を担う、新区画「ジャンピングフィールド」を開墾

日米ともに「あさつゆ」の需要が一層高まりを見せるようになり、リリースして数ヶ月の内に品切れが生じるようになりました。この状況を回避するために、「あさつゆ」の増産に向けて、ジャンピングフィールド(まさにスキーのジャンプ台のような急勾配を持つ区画)と呼ばれる新たな区画の開墾が始まりました。また、「あさつゆ」の主要栽培区であるポロ・フィールドも拡張することとなったのです。

2023年生産量42万本を突破。ビジターのワイナリー訪問も復活

コロナが明け、急速にワイナリーへビジターが戻ってきました。この年のヴィンテージでは、生産量も42万本を超えるようになり、ケンゾー エステイトのさらなる飛躍が始まったのです。

2024年オークションで最高落札額を記録、「紫鈴」100万本突破。日米両国で飛躍

コロナ禍で数年間休止していたオークション・ナパ・ヴァレーが、6月1日遂に再開されました。このオークションにて、ケンゾー エステイトのロットが19万5,000ドル(日本円にして約2,900万円)で落札されました。単一ワイナリーが提供したロットとしては、この年最高の落札額となり、全米でケンゾー エステイトのブランド価値が高まったことを証明する結果となりました。

そして、その人気ぶりは日本でも健在でした。この年、フラッグシップワインの「紫鈴」が、日本市場だけで、累計実売100万本を突破したのです。

ご縁が結び続ける、収穫の祝い
「ハーベストフェア2025」

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