新ワインメーカーヘレンの物語新ワインメーカーヘレンの物語

ケンゾー エステイト創成期の
礎を築いたヘレン・ケプリンガー。
これまでの歩みや
ワイン哲学をご紹介

2005年から2010年まで、ハイディ・バレット、デイビッド・アブリュー、マーク・ネインズとともにケンゾー エステイトの初期のワインメイキングの最前線に携わっていたヘレン・ケプリンガー。自身のワイナリーを開業すべく一度はチームを離れたものの、2025年、再びケンゾー エステイトへの復帰を果たしました。今や名実ともにナパ・ヴァレーを代表するトップ・ワインメーカーとなった彼女が、ケンゾー エステイトのテロワールから、いかなる可能性を引き出してくれるのか。日米で早くも熱い視線が注がれています。

ヘレン・ケプリンガーとはいかなる人物なのか。彼女が語る自らの歩みやワイン哲学をご紹介します。

豊かな食卓を囲む家庭で育まれた感性

ワインとの最初の出会いを教えてください。

私はオハイオ州で育ちました。家屋には素敵な庭があり、母は料理上手で、父はワインセラーを所有していました。両親は芸術、旅行、歴史などが好きで、そういった文化的な趣味嗜好が日常生活に自然と溶け込んでいる家庭環境であり、熱心なワイン愛好家(oenophile エノフィル)。ミシュランガイドを見ながら星付きレストランを巡ることが一般的になるずっと前から、ヨーロッパで食とワインを巡りながら旅をするのが、両親の余暇の過ごし方でした。家でも、キャンドルライトとともに美味しい夕食とワインを囲むことが多かったです。

小さい頃からワインが身近な存在だったのですね。

学生時代はマサチューセッツ州の四年制大学に進学し、科学を専攻していました。大学時代や卒業したての頃、友人たちと食事に出掛けるときの私の役割は、ワインを選ぶこと。友人たちは、ワインを選ぶということに及び腰のようでしたが、私は食事に合わせたワイン選びを愉しんでいたのです。しかし、この頃はまだ、自分が将来ワインメーカーになるとは夢にも思っていませんでした。

学生時代はワインの仕事を意識していなかったのですね。

大学卒業後は、医学部のある大学院への進学を志し、医学研究所で働き始めました。一緒に働く人々は素晴らしく、研究そのものは楽しかったのですが、日々の業務が自分に合っているとは正直感じられていませんでした。

約1年半が経過した頃、今の自分には変化が必要だと確信し、アメリカの様々な州を旅してから渡ったのが、東南アジアのタイです。そこでボランティアの教師として1年を過ごし、かけがえのない経験をしました。しかし、現地にはワインの文化は根付いていなかったですし、ボランティアの身だったので、当時ワインを買うお金もあまりなかった。その時、どれほど自分がワインを恋しく思っているかに気が付いたのです。

医学部志望から天職となるワインの世界へ

ボランティアで滞在していた東南アジアでの、ワインにまつわるエピソードはありますか?

タイに滞在中の年末、私にとって忘れられない出来事がありました。ボランティア仲間と一緒に、ネパールの山へトレッキングに訪れたときのことです。

ネパール東部のナムチェバザールという村には、世界一標高の高い場所にあることで有名なパン屋があり、私たちはそこに立ち寄りました。すると隣のテーブルに、現地の学校を支援する慈善活動のためにネパールを訪問していた、グレース・ファミリー・ヴィンヤーズのディック・グレース氏が、奥様や友人と座っていたのです。そして、彼はワイン愛好家の垂涎の的であるカルトワイン、グレース・ファミリーのボトルを持っていた。その瞬間、どれほど自分がワインを心の底から欲しているのか、改めて思い知らされたのです。

まさに運命的な出来事ですね。

アメリカに帰国後、医学部への出願準備と医学研究所での勤務を再開しました。それと同時に、マサチューセッツ州の西部にあるワインショップへ通い詰め、ワインを買い、ワインの本を読みふけるようになり、ワインへの興味関心は強まる一方。しかしまだ、ワインが自分の職業になるとは全く気が付いていませんでした。

出願を済ませていくなかで、友人の医師たちにキャリアパスについて尋ね回りもしました。一方、医学研究所での勤務を通して、自分の心にピッタリと合う職業を選びたいという気持ちも芽生え始めていたのです。自分が本当に好きなものは何なのか。自然、科学、芸術、旅行、歴史など、自分の好きなもの一つひとつに対する想いを掘り進めていきました。

その過程でカリフォルニア大学デイビス校に、栽培・醸造学の大学院プログラムがあることを見つけたのです。私は自分の天職を悟りました。医学部への出願手配をやめ、代わりにカリフォルニア大学デイビス校への出願に切り替えた。それ以降、一度も自分のキャリアに後悔したことはありません。

ヘレンのワイン哲学を形づくった名匠たちとの研鑽

ワインメーカーとして、どういった経験を積んできたのでしょうか?

私は25年以上にわたり、修行を積みながらワインをつくり続けてきました。最初のキャリアはパラダイムにて、ハイディ・ピーターソン・バレットのもとで数年間働きました。彼女はワインのブレンドとバランスを形成することにおいて非常に才能を有した人です。それはワインにおいてだけでなく、彼女の日常の過ごし方においても同様のことが言えます。ライフスタイルもワインづくりも、バランスを保つことはとても重要なことです。

つぎに、サンタバーバラのフィドルヘッド・セラーズでキャシー・ジョセフのもとで働きました。彼女のつくるワインはすべて少ロットの生産が特徴です。葡萄畑を細かなブロックごとに管理し、それぞれの個性や多様性を捉えることに長けている人物でした。

その後スペインに渡り、クロード・グロスのもとで働きました。彼は丁寧にテイスティングしながら早い段階でテクスチャーを捉え、プレスする最良のタイミングや、熟成の過程を見極めることに秀でていました。

そして、ケンゾー エステイトの創成期に携わっていくのですね。

まさに最初のヴィンテージである2005年から、ケンゾー エステイトでのキャリアがスタートしたのです。

再びハイディと、そして栽培家のデイビッド・アブリューとともに働きました。ハイディがつくっていたのは、昔と変わらず、ワインのブレンドとバランスを大切にしながら、非常に複雑で完成度の高いワイン。デイビッドは緻密な葡萄畑の管理を徹底してこだわり、区画ごとの多様性をワインづくりに最大限に活かすことを可能にしました。大きなブロックで葡萄畑の管理を分けてしまうと、土壌や日照方向、排水性、傾斜の違いなどで現れる味わいの違いが、おおまかな収穫判断や発酵ロットの中で埋もれてしまうからです。

その後は、ブライアント・ファミリー・ワインズでミシェル・ロランとも働きました。彼は収穫の最適なタイミングを真剣に見極めながら、卓越した醸造スキルも持ち合わせていました。これらすべての経験が、私のワイン哲学を形作ったのです。

ケンゾー エステイトでの新たなる旅立ちへ

2025年、ケンゾー エステイトへ戻った想いを教えてください。

私がケンゾー エステイトに戻った目的は、ワインづくりのさらなる限界に挑み、ケンゾー エステイトのワインをより一層の高みへと引き上げることです。

ケンゾー エステイトを一度離れたことで、技術をさらに磨きながら、ワインメーカーとしての哲学を洗練させることができました。この経験は私にとって贈り物でした。そして今、再び戻ってくることができたのは夢のようです。

私はケンゾー エステイトが掲げるビジョンや目標を深く尊重し共感しています。辻本 憲三&夏子オーナー夫妻から醸造チーム、栽培チーム、接客チームに至るまで、ケンゾー エステイトに携わるすべての人が、この地を心から愛していて、ここで生み出されるワインがいかに特別であるかという共通の認識があるのです。

ケンゾー エステイトの特徴は何だと考えていますか?

ケンゾー エステイトの葡萄畑は、多様な自然を持つ魔法のような類まれな場所にあります。サンフランシスコ湾からの影響も強く受けており、標高、日照方向、そして気温のパターンも相まって、ナパ・ヴァレーの他のどこにも似ていない、非常に特別な場所となっているのです。

この自然に囲まれた素晴らしい葡萄畑は、約180のブロックに分けられて管理されています。火山性土壌、多様な日照方向、そしてマイクロクライメットの要素が果実にもたらすのは、卓越した複雑さです。私はワインメイキングにおいて、この土地の複雑さを捉えながら、ワインに純粋さ、明瞭さ、そして素晴らしいバランスを保つことを目標としています。

ワインメイキングにおいて、ヘレンさんが大切にしていることを教えてください。

ワインづくりにおいて、卓越性を真剣に追い求め、より良い判断を常に追求しようとするならば、自分のやり方を大幅に変えないことが重要です。

私は毎年そのシーズンの特性と、これから収穫しようとしている区画について入念に考え抜きます。系統的なアプローチで、そのシーズンと土地を深く理解する必要があるのです。この先葡萄樹がどのように育つか、根がどこまで深く張っているか、暑さ寒さや雨などの気象現象にどのように対応すべきか。毎年シーズンの特徴は少しずつ異なりますし、葡萄樹も樹齢を重ね、樹齢ごとに講じるべき対策も変わっていきます。丁寧な観察と的確な判断が必要になるのです。なかでも、最も重要な判断は“いつ収穫するのか”です。早すぎても遅すぎてもいけません。美しく完璧に複雑なワインをつくろうとしたら、収穫期には非常に短い期間のなかで多くの判断を下すことになります。

その後には、樽の選定であったり、プレスのタイミングであったり、ブレンドなどの判断が続いていきます。それらはすべて大なり小なり判断の積み重ねです。最良の判断を下すために、シーズン全体と葡萄畑、そして自分がどんなスタイルのワインをつくろうとしているのかを、きちんと理解しようとすることが大切です。

あえて付け加えるとすれば、“最高のワインとは、そのワインが生まれた場所と、それをつくる人々を真に映し出すものである”というのが、私自身の信念です。ワインの出来不出来は葡萄の栽培に拠るところが大きいですが、葡萄栽培は土地が必要としているものや、土地の微妙な特性に寄り添う人々の手によって行われます。ワインをつくる人々が、なにひとつ欠ける要素のないよう細部にまで真摯に向き合うことで初めて、最高のワインをつくることができると思います。

復帰した2025年はどんなヴィンテージでしたか?

2025ヴィンテージは、まさに学びと基盤づくりの年でした。私は葡萄畑の管理チームと密に連携して、彼らの話に耳を傾け、葡萄樹が今後どのように育ってゆくかを予測したり、自分自身でも葡萄畑がシーズンを通じてどのように変化するかを観察したり、収穫時期の判断に注力したのです。

醸造チームとの連携も同様です。私は彼らが今まで手掛けてきた過去のヴィンテージのワインについて、醸造プロセスにおけるそれぞれの判断を理解するために、多くの時間を費やしました。醸造チームは非常に献身的に私にいろいろと教えてくれました。ワイン醸造とは、過去のヴィンテージから得た知識を積み重ね、現在および将来に活かせる小さな改良点や改善点を見出すことに他なりません。2025ヴィンテージのワインは、まさにそれを体現するものです。

最後に、ケンゾー エステイトのファンの方々へメッセージをお願いします。

ケンゾー エステイトのワインボトルを開けた方が、この葡萄畑がいかに特別な場所であるかを感じ取ってくださることを願っています。私がつくったワインが、それを育む環境、自然、気候、そして土壌を映し出していてほしいです。なによりも、ワインが友人や家族とともに楽しまれ、そうしたひとときをより豊かなものにしてくれることを願っています。

ヘレン・ケプリンガー
(Helen Keplinger)

「ブライアント ファミリー」「グレース ファミリー」といった名門ワイナリーのワインメーカーを務め、ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選出されるなど、今やナパ・ヴァレーで5本の指に入ると称されるワインメーカー。2000年にカリフォルニア大学 デイビス校でワイン醸造学の修士号を取得。パラダイム・ワイナリーでキャリアをスタートさせ、2004年にはスペイン カタルーニャ州プリオラートに渡り、セラーズ・メリス ワイナリーの設立に携わる。2005年から5年間、ケンゾー エステイトのエステイトワインメーカーを務め、デイビッド・アブリューやハイディ・バレットとともにワイナリーの礎を築いた彼女が、2025年に復帰。エレガンスを極める醸造センスで、ケンゾー エステイトのワインをさらなる高みへと進化させてくれることでしょう。

ヘレンが手掛けた「結 2025」と
前ヴィンテージ「結 2024」の、
飲み比べを愉しみませんか。

ヘレン・ケプリンガーが手掛けた「結 yui 2025」と、マーク・ネインズが手掛けた「結 yui 2024」の飲み比べができるセットを限定50セットでご用意いたしました。

「結」は、ケンゾー エステイトで日々のワインづくりを支えている仲間同士の絆の深さを象徴して名づけられた、ドライテイストのロゼワインです。

「結 2024」は、マルベック主体でスキンコンタクトの時間を長く取っているため、色調は濃く鮮やかです。赤系ベリーやスイカズラなどの可憐なお花を閉じ込めたようなアロマに、アプリコットや苺などの果実味をしっかりと感じられる味わいが愉しめます。ブイヤベースなどのしっかりと味付けをした海鮮料理と好相性です。

新ヴィンテージの「結 2025」は、メルロ主体に変わったことに加え、スキンコンタクトをせずに非常にゆっくりと長い時間をかけて優しくプレスしたことで、桜の花びらのような淡い色調に仕上がりました。白苺や桜の花の香りにフレッシュハーブのアロマが漂います。口に含めば、グリーンアップルやラズベリーのフレッシュな果実感にミネラルのニュアンスが感じられ、生き生きとした美しい酸が印象的な味わいです。お寿司などの繊細なお料理を引き立てることができるロゼワインと言えます。

ふたつのヴィンテージの色調の違いや香りと味わいを比較しながら、それぞれの魅力をご堪能ください。

結ダブルヴィンテージセット (2024&2025 フルボトル)
¥19,500(¥21,450税込)

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結ダブルヴィンテージセット (2024&2025 ハーフボトル)
¥9,900(¥10,890税込)

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