テロワールが育む、
カベルネ・フランの可能性。
「明日香」のスタイルを確立させた
ワインメーカーが語る
「明日香 2021」の魅力

カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが順調に育たない年でも、毎年しっかり収穫できるほど、カベルネ・フランは非常に強健な葡萄品種で知られ、生産量が安定しています。ただし、それを可能にするためには十分な日照と豊かな土壌が必要です。ケンゾー エステイトの畑はどちらの条件も満たし、カベルネ・フランにとって最高の栽培環境であると言えるでしょう。

カベルネ・フランの畑は、ケンゾー エステイト全体のうち約9％で栽培され、「明日香」にはその中でも特に質の良い葡萄を用いています。畑には関係者以外立ち入れませんし、他のワイナリーにケンゾー エステイトのカベルネ・フランを譲ることも、もちろんありません。ケンゾー エステイトの畑で収穫できたカベルネ・フランを主体にできるワインは「明日香」だけです。畑の希少性が“カルト”的人気の要因の一つに数えられるでしょう。

経験豊富なワイン愛好家にも満足いただける複雑さを備えながら、カベルネ・フランになじみのない方でも親しみやすい包容力ではないでしょうか。

それは成熟した質の高いカベルネ・フランを使用しているからでしょう。明るく豊かな果実味、なめらかなタンニンがもたらすしなやかな口当たり、フローラルの華やかな香りは、カベルネ・フラン由来のものです。さらに樽熟成過程でタンニンと調和したフレンチオークからもたらされたバニラの風味などにより、まろみのある味わいも評価を得ている理由ではないでしょうか。

ヴィンヤード・マネージャー（栽培責任者）のデイビッド・アブリューも保証する熟成ポテンシャルの高さも見逃せません。世界的にも影響のあるワイン評価サイトのジェームス・サックリングでも、「明日香 2021」の飲み頃は2029年からと評価されました。抜栓直後も美味しく飲めるように造っていますが、数年後を心待ちにしながら熟成する愉しみもあります。そこもワインラバーの心をくすぐるのではないでしょうか。

味わいの多様性を高めるため、ケンゾー エステイトではすべての赤ワインで5品種の葡萄をブレンドするように努めています。しかし、それにこだわるばかりでは、銘柄の個性を消すことにもなりかねません。最適な品種と割合を決める唯一の方法は、多くのブレンドを試作して、どれが最良かを見極めるだけです。

発酵中に行う、果皮と種を接触させるマセレーションの時間が鍵です。長く触れているほど、多くのタンニンが抽出され、ドライな口当たりになります。ナパ・ヴァレーのほとんどのワインメーカーと同様に、ケンゾー エステイトでも長時間接触させることを避けています。そのため、若いうちから飲みやすいワインになるのです。

収穫量が少ないうえ、厳選した葡萄を使うトップ・キュベの「紫 murasaki」と「藍 ai」に造り方が似ているため、「明日香」もプレステージに位置づけてもいい貴重なワインでしょう。反面、カベルネ・フラン主体で独自性が強いにも関わらず、個人的にはケンゾー エステイトの赤ワインの中でもバランスが良く、まろやかな口当たりで親しみやすいと感じています。

2021年は降雨量が非常に少なく、完璧な年でした。ナパ・ヴァレーでは2年連続となる干ばつ状態となり、大きくなりがちなカベルネ・フランの実を適度な重量に抑え、理想的な凝縮感を実現できました。夏季の過度な高温・日射による影響も最小限に留められ、例年以上に理想的なヴィンテージです。

「明日香 2021」は、豊かなアロマとしなやかな質感を兼ね備えた仕上がりとなりました。ミネラル香にジューシーな果実香やカカオ、スミレの華やかな香りが漂い、心地よい余韻を誘います。さらに繊細なバニラのニュアンスと、オークタンニンが柔らかな口当たりを生み出しています。鮮やかな果実味と緻密なタンニンが調和し、長期熟成することでの変化も愉しみなヴィンテージになりました。

汎用性の高さです。「明日香 2021」そのものに向き合い、味わいを満喫されるのはもちろん、様々な料理とペアリングしやすくもあります。お一人でも、ご家族やお仲間とのシーンでもお選びいただけるワインだと、自信を持っておすすめできます。

「明日香 2021」の美点である、フローラルの華やかな香りは、ぜひ感じてほしいです。香りを存分にご堪能いただくため、グラスでゆっくりと空気に触れさせてください。時間をかければ香りがさらに広がり、一層魅力を引き出します。

グリルしたラムやポークをはじめとする肉料理はもちろん、多種多様な野菜を使った料理との相性が抜群です。特にきのこを使った料理や様々な具材を盛り付けたサラダでは、親和性の高さを実感できるでしょう。

重い赤ワインとは合わせにくい繊細なクリームソースを使った料理にも、見事にフィットする点からも「明日香」のポテンシャルの高さを感じられるはずです。

「明日香」を造ることで、カベルネ・フランはブレンドの補助品種ではなく、主役になっても十分に通用する実力があることを知りました。それはケンゾー エステイトが大切にしている、多様性を示すことにも繋がっています。

ケンゾー エステイトのワインは、独特で多様なナパ・ヴァレーのテロワールがあってこそ。「明日香」のカベルネ・フラン主体というユニークさも、熟成のポテンシャルの高さも、この環境だから生まれました。

ケンゾー エステイトのテロワールの奥深さと細部まで行き届いた醸造技術に感嘆していただけるのが、「明日香」ではないでしょうか。