メルロ主体の上級キュヴェに
生まれ変わった「紫」の物語
11月7日は、国際メルロの日として、世界的にメルロを愉しむ日として定められています。ケンゾー エステイトのメルロといえば、「紫」です。
そこで、ここでは、国際メルロの日にちなみ、「紫」の知られざる歴史を紐解いていきましょう。
「紫」と言えば、言うまでもなく、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の「藍」と並ぶ、ケンゾー エステイトのトップキュヴェで、2018ヴィンテージでは、「紫」「藍」ともに、全米の格付サイト「CWA」で100点満点を獲得するという快挙を成し遂げたのも、まだ記憶に新しいことでしょう。
「紫」のブレンドの変遷
ケンゾー エステイトも今年で15周年を迎えますが、今でこそメルロを主体し、人気を博している「紫」は、創業当時の15年前に発表された2005年のファースト・ヴィンテージは、メルロではなくカベルネ・ソーヴィニヨンが主体としたプロプライエタリー・ワインで、それから数年間、ブレンド比率は変われど、同様のスタイルが続いたのです。
下表「紫」のブレンドの変遷を見ると、当時の「紫」は、「紫鈴」に似たカベルネ・ソーヴィニョンを主体としたブレンド構成のワインで、まさに「紫鈴」の上級キュヴェ的な位置づけがなされていたのです。
「紫」主要3品種ブレンド比率の変化
2011年、厳しい収穫から感じたメルロの重要性
しかし、2011年、ナパ・ヴァレーは日照量の少ない天候不良の年を迎えました。この年、すべての葡萄品種に影響が及びましたが、中でも、最も収量が激減したのが、メルロでした。しかし、そんな不作の年でも、ケンゾー エステイトは、品質を維持することを最重要視します。そのために必要なことは、極端すぎる摘房なのです。
摘房とは、1本の葡萄樹に、鈴なりについた葡萄の房を、ある程度切り落とし、ひと房の葡萄に養分を集中させ、果実の凝縮感を上げ、より熟成した葡萄を作るための作業で、通常は、1本の葡萄樹に2、3房を残すのが一般的です。
しかし、この年の摘房は異常でした。日照量の少なさをカバーするためには、極端な摘房を行わざるを得ず、大きな葡萄樹で、かろうじてひと房残せるかどうかといった状況でしたので、2011ヴィンテージの評価は非常に高いものでしたが、その代償として、生産量が激減したのです。
中でも、メルロの減産は著しく、2011ヴィンテージの「紫」には、メルロが7%しか使用できず、しかもわずか500本しか生産できず、ほとんど世に出回ることはなかったのです。
この年を経験したワイナリーオーナー辻本憲三夏子夫妻や栽培家のデイビッド・アブリューらは、改めてメルロの重要性を実感します。
一方で、「紫鈴」は、確固たる評価を得て、すでに、ケンゾー エステイトのフラッグシップとしてのブランドを確立していましたので、このブレンドスタイルは「紫鈴」にまかせ、辻本らのワインメーキングチームは、「紫」をメルロ主体の上級キュヴェに移行させ、次の2012ヴィンテージで、「紫」は、75.6%のメルロを主体とした構成に変わっていったのです。
メルロ主体の「紫」の成功
その後の「紫」が高く評価されていったのは、言うまでもありません。2015ヴィンテージでは、辛口批評で有名な専門誌「WINE ENTHUSIAST」で95点の高評価を獲得。2016ヴィンテージでは、全米TOP100WINEの1本に選ばれ、そして2018ヴィンテージでは、前述した通り「CWA」で100点満点を獲得したのです。
■これまでの主な受賞歴
「紫 2015」 | 全米(WINE ENTHUSIAST)の評価で 95 点を獲得。 |
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「紫 2016」 | 全米(JAMES SUCKLING)でトップ100 ワインの1 本に決定。 全米(WINE ENTHUSIAST )で「CELLAR SELECTION」を受賞。 |
「紫 2017」 | 全米(WINE ENTHUSIAST)の評価で 94 点を獲得。 全米(WINE ADVOCATE )の評価で 94 点を獲得。 |
「紫 2018」 | 全米(CWA )の評価で 100 点を獲得。 |
この頃の「紫」には、なんと88%前後のメルロが使用され、メルロ主体のワインとして、秀逸な個性が創り上げられ、「紫」というブランドが、メルロの代表格として、確固たる地位を築いたと言っても、もはや過言ではありません。
そんな「紫」を、国際メルロの日を迎えるこの機会に、ぜひお愉しみいただければ幸いです。
「紫 murasaki」の商品ラインナップ